いまここ日誌

アジア×アドテク×マネジメント的な3次元ブログ

便益の束的にサービスを見直す

1週間半の日本滞在中に2回も台風に遭遇しそうです。外に出れないので4ヶ月ぶりにブログを更新。

日本に一週間以上滞在するのが10ヶ月ぶりぐらいで改めて日本のサービスって気が効いてて良いなぁと感じました。おもてなし精神が国民性として根付いているのかどうかは分かりませんが、日本のサービスはフィリップ・コトラーの言う「便益の束」的な思考に満ち満ちている気がします。

「便益の束」とは顧客からのニーズを、商品やサービスそのものだけで捉えるのではなく、その商品やサービスがもたらす価値も踏まえて総括的に捉えていこうとする思考形態のコンセプト。

詳しくはコトラーさんに聞いてほしい(読んでほしい)のですが、単純化すると、顧客は製品・サービスそのものを買っているのではなく、その製品・サービスが提供する便益に対して対価を払っているということ。例えば同じ携帯電話でも「らくらくホン」と「iphone」を買う人は携帯電話に求めているもの、全然違いますよね。

顧客が求めている便益から上流の思考をスタートし、プロダクトを創る、サービスを創る、顧客コミュニケーションを設計する、組織を最適に設計するというのは当たり前のようで難しい。なぜかというと何を求めているかを知るには知識・経験・想像力・創造力がモノを言うからしっかり市場に向き合ってないと見えてこないから。また一人で見てもダメで、組織としてそういう目線で物事を捉えるような文化が無いと理解が得られなかったりもする。

日本初のサービスの便益のレベルを見るとby natureで本質的な便益に迫ってる(TOTO音姫なんか凄いと思う)気がしてて凄いなぁと改めて思う一方で、海外市場で上手く行かないケースが多いのは言語とか心的な壁で創造力が働かないんだろうなと思い残念に思い、また自分にはそれが見えているか考えさせられました。もう一度見直してみようと思います。

 

日本ではあんまりだけど海外では普通な事業開発的Linkedin活用法

f:id:akifusa:20140531200808j:plain

日本だとすっかり流行らないLinkedin。一度日本を出るとみんな使ってます。しかも一般的な転職/キャリアアップ用のSNSというよりも、ビジネス用のコミュニケーションツールとして使われています。日本だと名刺交換した後にFacebookの申請が来たりしてそこでコミュニケーションが起きたりしますが、公私をしっかり分ける欧米諸国ではそこの部分がLinkedinで行われているようなイメージでしょうか。

90 Amazing LinkedIn Statistics & Facts (May 2014)

この記事によると米国ではユーザーが1億人、米国の就労人口が大体1.5億人なので2/3はアカウントを持ってる事になります。最新の全アカウント数は3億と言われており、米国外でのユーザーが過半数を越えています。しかも40%が毎日ログインするユーザーだそうです。しかしながら、毎日そんな多くの人が仕事を探しているわけもなく、他の活動で盛り上がってるわけですね。

そんなに盛り上がってるのに仕事に活用しない手はないということで、以下3つの機能について簡単な使い方の紹介です。アカウントを持ってなかったり放置している人はこれを機会に使ってみてください!超便利です。

1. 商談をしたい企業の担当者レベルまで特定してコンタクトできたり、されたりするプロフィール機能

ある会社にコンタクトしてみたいとするとまずはwebの問い合わせから送ってみたり電話するのが普通と思います。Linkedinを使うとこれが、「あの会社の、この製品担当の、営業の人」まで探せ個人宛にコンタクトできます。

f:id:akifusa:20140531203936p:plain

探し方は簡単で画面の上にある検索窓に意中の会社の名前を入れて、そこの会社のページがあればそこの所属メンバーから、またはプロファイルで引っかかった人をたどって行くと大体見つかります。あとは遠慮せずに自分の自己紹介とコンタクトしたい理由をメールしてみると経験則的にはe-mailよりも高い確率で返信があります。便利ですね。

もちろん誰かがあなたを探し当てる事もあるかもしれないので、プロフィールを日々しっかりアップデートして検索の網に引っかかるようにしとく事も大事です。ちなみにAmazon.comで探すとLinkedinのプロフィールの書き方についての本もあります。すごいですね。

Amazon.com: How to Write a KILLER LinkedIn Profile... And 18 Mistakes to Avoid: 2014 Edition eBook: Brenda Bernstein: Kindle Store

2. 業界の最新情報が集まるグループ機能

Linkedinの便利なところはこのグループ機能です。同じ業界やビジネスに属している人が様々なトピックでグループを作って活発に商談/情報交換が行われています。

私の所属している業界ですとAd eXchange ExpertsとかSSP - Supply Side PlatformとかRTB Asiaとか広いものからマニアックなものまで全部で210万グループあるそうです。

探し方はここのInterestsからgroupを選んで気になるワードを打ち込むだけ。

f:id:akifusa:20140531204749p:plain

 非公開グループもありますが基本的には公開なのでどんどん入ってみるのがよいと思います。

3. 自分の会社の宣伝も可能、気になる会社の情報もフォロー出来るビジネスアカウント機能

Linkedinにはビジネスアカウントがあり、会社としての情報を公開することもできます。力を入れている会社ではここでの広報活動を強化しているので最新情報はほぼ手に入ります。Twitterのようにビジネスアカウントをフォローでき、いったんフォローしたらあとは自分のタイムラインに反映されるので、簡単です。

探し方は先ほどと同じInterestsのところからCompaniesを選んで探せば出てきます。欧米系のIT関係ならほぼあるんじゃないでしょうか。ちなみにこのスクリーンショットは自分がフォローしているところですが、右上のFollowingのところをクリックすればフォロー完了です。

f:id:akifusa:20140531205822p:plain

自分の会社のアカウントも無料で作れるので会社をやってる方は是非そちらも!

 

 

日本企業の海外進出を失敗せしめる7つの間違い

海外進出って実際にやってみるとすごい難しいものです。かれこれ2年ぐらい失敗だらけといっても過言ではないぐらい。

でも日本企業は海外に打って出ないと未来はない。なので、この1年半ぐらいで学んだShouldn't doと思う7つの事をまとめてみる。お役に立てば幸い。

1. 多くの企業で「暫く黒字化しなくてもじっくりいこう」という損を出してもいいメンタリティが働く

損を出していい事業などない。ましてや市場変化のスピードが速いのにじっくりやってる余裕もない。

2. 事前の調査に凄い時間をかけている。しかも調査は法制面等コンプラ系を調べがちで、事業面のフィジビリは弱い。

調査が終わった頃にはチャンスの窓は閉じている。法制面は専門家に任せれば良い。事業がどうしたらいけるかを理解する方が格段に大事。さもなければコンプラ以前に市場の論理でアウトになる。

3. 2に関連して日系企業の人にしか話を聞かない事が多い。

(ほぼ)単一民族社会で育ってきた我々ジャパニーズは得てして同じ民族の世界に閉じこもりがち。しかしながらジャパニーズは海外ではマイノリティ。マジョリティの意見を聞かずにどうする。

4. トップは日本人でなければならないと無意識で思い込んでいる。

そもそも日本人駐在員のコストは馬鹿にならない。存在するだけで損益分岐点が上がる。新興国ビジネスで日本人のコストを回収するのがどれだけ大変な事か。本社へのメッセンジャーとして日本人を置いておくぐらいなら、ローカルの人材を抜擢する方がましではないか。日本人がトップじゃないと安心出来ないのは、英語が出来ない日本人の怠慢と、軽い日本人が優等人種という妄想と思う。

 

5.日本のビジネスの延長線からスタートする。

日本のビジネス環境は間違いなくガラパゴス。そこの延長線上で思考して、「俺たち進んでるからアジアだったらいけるんじゃね」というと痛い目を見る。特に新興国の人々は日本人向けのハイコストなサービスに払う余裕も無い。現地の可処分所得からコスト構造を作らないと儲かる訳がない。

また海外事業を本社がコントロールしたがる傾向を感じるが、駐在員の身からすると本社の言う事を聞いていればいい状況は2つの意味で最悪。第一に失敗してても本社のせいにできる。第二に自分たちで必死に考える事をやめてしまう。マーケットが違うのだから競争戦略も組織戦略も違って当然。最前線で学びPDCAを回せるように最優秀な人材を投下して、大幅に権限委譲した方がよい。


6. 「海外」なんていうものは存在しないのに、個々のマーケットをよく見ずにマクロでものを見がちになる。

そんな乱暴なセグメンテーションはない。あるのは個々の国、現地の人々、生活である。

7. 成長を求めて海外にうって出るのに、ちょっとだめだと縮小している日本市場に閉じこもる。

日本市場に未来はあるのか?

日本の事業はそんなにすぐに立ち上がったのか?

「海外だから」リスクを過大評価し、チャンスを過小評価して機会を逸してないか?

いまここな現在地

もうすぐ日本を出て2年ぐらいになり、帰る機会もそんなにないので近況報告も兼ねて今何をやってるのかまとめてみます。

約2年前にインターネット広告業界でSSP(Supply Side Platform)というシステムを提供しているGeniee(ジーニー)という会社にはいり、そこから海外子会社の経営を担当しています。1年半前にシンガポールに子会社を設立し、半年前にはベトナムハノイにも子会社を設立しました。今は両社のCFO兼COO的なポジションで仕事をしています。偉そうなタイトルですが人数少ないので全然偉くはないです。

海外でも日本と同様にSSP事業を展開しており、基本的な軸足はASEAN地域がメインマーケットです。SSPが何か良く分からない人向けにシンプルに言うと、ウェブサイトのオーナーさんに対して広告を掲載して儲けるお手伝いをするサービスです。業界内の人は細かい突っ込みは勘弁願います。Genieeはもともと裏方的な事業かつ本社の方があまり表に出ないのであまり知られてないですが、直近3年間の売上高成長率1,474%を記録していて、日本のテクノロジー・メディア・テレコミュニケーション業界の企業で売上高成長率が第4位だったそうです。すごいですね。そんな会社の海外事業もとっても伸びているのかというとこの1年半は試行錯誤の連続でまだまだ納得出来る成果とは言えないのですが、全然ダメという感じでもない現在地。アドテク的な話、アジア的な話、マネジメント的な話、3次元でお伝えしてこうかと思います。